お客様よりカスタムのオーダーを承りまして、今回はそのときの作業の様子をご紹介させていただきます。
バイクはヤマハ・CROSSCORE RC(X2V5-0001041/PC65RM)2022年度モデル ミスティグリーン になります。
オーナー様より「タイヤをブロックパターンで今、付いているものよりも太めのものへの交換と、あわせて11speed化が可能であればお願いします。」とご相談を受け、おおよその予算を10万円として承ることになりました。
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リアスプロケットを取付けるフリーボディの規格を確認したところ、11speed対応になっていたので部品を手配し、カスタムに取掛かることになりました。
結論として、今回の11speed化に最終的に使用した部品は以下のとおりです。
シフター:SL-U6000-11R
スプロケット:CS-LG400-11S 11-45T
チェーン:CN-LG500 138L → 17L余り
リアディレイラー:RD-U6000-GS(フロントダブル用)
クロスコアRCのフロントギアは「シングル」ですが、今回は「ダブル」用のリアディレイラーを使いました。
以下は今回のカスタムの要点となったリアディレイラーの選択と考察になります。
2023年にシマノから発売された新型コンポーネント・CUES(キューズ)。
「ハイエンドグループセットの信頼感を手の届きやすい価格帯で提供。」が特徴で、E-シティバイク、トレッキングバイク、MTB、ロードバイク、グラベルバイク、カーゴバイク、E-カーゴバイクのいずれにも使用できるグループセットとなっており、今回の「クロスコアRCを11speed化、リアスプロケットをワイド化したい。」という際にも、フリーボディの規格があえば導入可能です。
CUESの特徴として、チェーンが9speed、10speed、11speed共通のLINKGLIED(リンクグライド)となっており、近年のスポーツバイクに普及しているHGとは互換性がありません。また、クランクセットはシングルまたはダブルギアから選択できるようになっていますが、リアディレイラーも「フロントシングルギア用」と「フロントダブルギア用」で分かれているのが他のコンポーネントでは見かけない珍しいものとなっています。
上図は今回e-bikeのヤマハ・クロスコアRCに導入したRD-U6000-GS。フロントダブルギア用のリアディレイラー。
こちらはe-bikeのBESV・JF1に搭載されているRD-U6020-SGS。フロントシングルギア用のリアディレイラー。
一見すると同じですが、インナーケーブルの通し方が異なり、ダブルギア用は内→外、シングルギア用は外→内になっています。またHIGH・LOW調整ボルトの位置も異なります。
最初に用意したのはフロントシングルギア用の「RD-U6020-SGS」で、ディーラーマニュアルに沿って取付け・セッティングを試みたものの、1sに入りませんでした。ディレイラーハンガーの変形なども考えられましたがこちらは正常で、指でリアディレイラーを押してみてもこれ以上奥に入らないといった感じでした。
そこで再度注目し直したのが「チェーンライン」。先述のBESV・JF1はフロントシングルギア用のRD-U6020-SGSで正常に動いていましたが、ドライブユニットは後輪についています。一方でヤマハ・クロスコアRCはボトムブラケットと一体となったセンターユニット。
サーリー・プリアンブルのシングルスピード化カスタムでもそうでしたが、適切なチェーンラインが出ていないとチェーンに負担がかかります。ましては変速操作は精度が求められるため影響も大きく、チェーンラインが適切とは言い難いバイクの場合は変速しにくいというケースは何度か見てきました。
「もしかして、クロスコアRCのフロントギアの位置はダブルギア寄りなのでは?」と仮説を立て、フロントダブルギア用のRD-U6000-GSを取付け・セッティングしてみたところ、今度は1sに入るようになりました。
e-bike以外であれば、CUESにはボトムブラケットも軸長が選択できる、嵌合部分がスクエアタイプもあるのでチェーンラインの補正も可能ですが、ドライブユニットやセンサー類がボトムブラケット付近に搭載されている場合は軸長及びチェーンラインの変更ができないので、今回のように「フロントシングルギアなのにリアディレイラーはフロントダブルギア用を使用した方が調子がよい」というケースも考えらます。
今回は「たまたま」の可能性もありますし、今後フレームジオメトリーの変更やドライブユニットの小型化等で改善される可能性もあるので、このケースはうまくいかなかった時の解決策の一つとして捉えていただければ幸いです。
注意点といえば、シフターの変速段数を示すインジケータも少し大きめです。ハンドル周辺にミラーやベル等が付いている場合や、ライザーバーなどでは取付けに制限が出る場合があります。
タイヤはマキシス クロスマークII 27,5"×2.25"に変更。元の太さが27.5×2.0のスリックタイプで、クリアランスを考えるとこの太さが最大と思われます。
改めてカスタム後の状態。雰囲気がガラッと変わりマウンテンバイクという印象になりました。オーナー様、ありがとうございました。
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