この記事では当店をいつもご利用頂いているオーナー様の愛車・コルナゴの「レースからロングライドまでこなせるフルカーボンモデル」・C-RSに対するサポートの記録になります。
4. ビッグプーリー化と「ヒルクライム仕様」スプロケットへの交換
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【ロードバイクのビッグプーリー化】KCNC ビッグジョッキーホイールシステム - 実際に変速性能は低下するのかを検証 - (0:40)
1. オーバーホール(2021年12月)
こちらが作業前の状態。オーナー様は湘南方面へのサイクリングを中心に年間2,000km乗られていて、チェーンなどの消耗に加えブレーキ操作が重たかったり海沿いの道を走ることで付着する飛砂など、少しずつ疲労が蓄積されているような状態でしたので、リフレッシュさせるような作業内容で承りました。
よって、今回のメニューは
1. ブレーキワイヤーの交換
2. シフトワイヤーの交換
3. バーテープの交換
4. チェーンの交換
5. ヘッドセットのクリーニング
6. スプロケットのクリーニング
7. ハンドル微調整
と、以前に交換していたブレーキパッドを除いた、いわゆる " セミオーバーホール " という作業でした。今回はハンドル微調整、ヘッドセットのクリーニング、スプロケットのクリーニングの作業内容の一部をご紹介させていただきます。
オーナー様より「気のせいかハンドルが左側に傾きます。走行には支障ないのですが、ロードバイクを写真撮影する際に決まって左側に傾くので、その調整もお願いします。」と申し出があり、以前にもご紹介させていただいたハンドルアライメントチェッカーで確認してみたところ微妙に曲がっていました。
オーナー様のお話より、ビンディングペダルが外れず何度か立ち転けをされたようで、そのときにセッティングがずれてしまったものと思われます。こちらを真っすぐにするハンドル微調整のメニューも追加していただきました。
ヘッドセットはシールドベアリングで傷みにくい構造になっているものの、飛砂は容赦なくヘッドセットの中に浸入してきます。グリスと飛砂が混ざり黒く変色していたので拭き取ります。放っておくとベアリングやワン(受け皿の部分)を痛め、ハンドル操作に静かに影響がでてきます。
パーツクリーナー等の強い噴射をシールドベアリングに吹きかけると、シールドベアリング内に密封されているグリスが抜けてしまうおそれがあるため、攻撃性の低いクリーナーを使用しながら基本的にはウェスで拭き取りました。
スプロケットは今回取外してクリーニング。使用したのはチェーンクリーナーとマルチフォーミングクリーナー、いつもの組合せ。チェーンクリーナーで汚れを浮かせて、マルチフォーミングクリーナーで汚れを流し、エアダスターで細かい砂汚れを落として、マイクロファイバー製のウェスで拭き取りました。
チェーンも新しくなり、ブレーキ・シフトワイヤーも張り替えて動作もスムーズに。その他にもリアディレイラーのプーリーに詰まっていた泥汚れを落としたり等、細かい箇所も仕上げて完了。お渡し前に確認していただいたところ「漕ぐのがすごく軽くなった。」と喜んでいただけました。
2. フレーム補修のお手伝い(2023年1月)
ある日、オーナー様より
「サイクリングの休憩中に強風でずれながら倒れて、フレームに大きな傷が入ってしまったのでリペアを依頼しようと思っているのですが、先方より『フレームだけの状態で送ってほしい』と言われたので手伝って欲しい。」とご相談を受け、
一度バイクを解体して、補修が終わったら再度組立てる「お手伝い」をさせていただくことになりました。
上図が補修を受ける前の様子。幸いにもフレームに凹み等の破損は無かったものの、痛々しい姿に。
サドル・シートピラーも取外す事になるため、ポジションを再現するためにもとのサドル高さを記録しておきます。
今回はBB(ボトムブラケット)を取外さなくても補修作業を受けてくれたので、BB以外を取外しました。
せっかくの機会なので重量を測定。BB込みのフレーム重量は1356g。
フロントフォークの重量は431g、合計1787gと超軽量です。
フレームの所々からはみ出している管のようなものは「ケーブルライナー」といい、ケーブル内蔵フレームでブレーキ・シフトケーブルを通す際に「ガイド」の役割と、ブレーキ・シフト操作をしたときにインナーケーブルが直接フレーム内に当たるのを避け、ぶつかる音を軽減させる役割があります。
ケーブルライナーが無いとワイヤー交換の難易度が「暗闇の中で針に糸を通すように」高くなってしまうので、インナーケーブル・ケーブルライナーの交換時はうっかり2つとも同時に抜かないよう気をつけます。
フレームまで解体後、エアキャップ(ぷちぷち)でフレーム本体を包みダンボールに入れてお持帰りいただいて先方へ送りました。ダンボールはオーナー様より事前にご相談があったので、スポーツバイクが入荷した際に梱包されているものを差上げました。次の工程は補修が終わり戻ってからになります。
3. 再組立てとエアロハンドル交換(2023年2月)
約1ヶ月ほどで補修作業が完了しオーナー様の元に戻ってきました。痛々しい姿だった左シートステーは見事なまでにキレイになりました。ここから再度組立てていきます、
フレームの補修前より、かねてから予定していたカスタムをこのタイミングで一緒に作業していきます。その中の一つが「エアロハンドルへの交換」。
今回交換させていただいたのは「SHIMANO PRO(シマノプロ)・VIBE AERO ALLOY PURSUIT(エアロアロイパシュート)」。
「パシュート」という名前の通りトラック競技向けではありますが、シストケーブルをハンドル内部に通せるよう穴が大きくなっているのでロードバイクでも使用可能です。
重量は実測値で337g。ハンドル幅は400mm(芯-芯)になります。
バーテープはSUPACAZ(スパカズ)のスーパースティッキークッシュの「クラシック」をチョイス。一緒に純正ブラケットカバー(ST-R8000/ST-R7000兼用)も交換してハンドル周りをリフレッシュ。
先述の通り、ケーブルは全てハンドル内を通すことができるので非常にスマートになります。フラット部分のPROロゴが「攻め」な印象で、C-RSの持つ雰囲気と合わせてさらに格好良くなったと思います。
4. ビッグプーリー化と「ヒルクライム仕様」スプロケットへの交換(2023年3月)
オーナー様よりかねてからご相談を受けていた「リアスプロケット11-34Tへの変更」と「ビックプーリー化」に必要な部品が半年以上かかりましたがようやく揃ったので早速交換させていただきました。
今回のカスタムにあたって交換したパーツは
・KCNC ビッグジョッキーホイールシステム9100(ビッグプーリー)
・シマノ RD-R8000-GS(リアディレイラー)
・シマノ CS-HG700 11-34T(カセットスプロケット)
・シマノ CN-HG601-11(チェーン)
と、変形していたディレイラーハンガーです。
ビッグプーリーキットはリアディレイラーの構成部品の一つ「ケージ」と入れ替えて使用します。なので最初はケージの交換作業が必要です。
このケージ交換ですが作業に注意すべきポイントがあります。リアディレイラー中心付近のスプリングの張力が強いため作業がしにくいです。交換にあたってはいくつかの方法がありますが、今回は不要になったシフトインナーケーブルを再利用して「一番軽いギアの位置」にして交換しました。
次にケージを固定している「ストッパーボルト」を取外します。このストッパーボルト、ネジの頭が星形になっており着脱にはトルクスレンチが必要です。また、サイズも自転車の部品では少し珍しい「T-10」になっています。
緩めるとストッパーボルトが少しずつ浮いてきます。ケージとディレイラー本体の間には「Pテンションスプリング」があるので、ケージを取外す際には勢いあまってPテンションスプリングを紛失しないよう慎重に外します。
左からディレイラー本体、ストッパーボルト、ケージ。ケージに付いているPテンションスプリングはビッグプーリーキットを取付ける際に再度使用します。
今回リアディレイラーを「105」から「アルテグラ」にグレードアップしましたが、その理由はKCNC・ビッグジョッキーホイールシステム9100はシマノ105に装着不可だからです。
ビッグジョッキーホイールシステム9100の取付対応は
・シマノ デュラエース9100
・シマノ アルテグラR8000
・シマノ XTR M9100
のみとなっています。
似たような形状でありながら取付不可な理由の一つとしてケージを取付ける穴の直径がアルテグラ(デュラエース等)とそれ以外では異なるため、ビッグジョッキーホイールシステムを取付けようとしても入りません。
ちなみにビックプーリー化によりケージの長さ自体は元のショートケージ(SG)より長くなりましたが、34Tを使用する場合はロングケージ(GS)タイプのリアディレイラーへの交換は必要です。
理由としてはショートケージとロングケージとの間には、ケージ自体の長さ以外にも
・プーリーの取付台座の形状が異なる
・プーリーの取付角度が異なる
→ ケージの長さだけではショートケージで対応できる30Tと34Tとの差に対応できない
以上の理由から交換が必要になってきます。ビッグプーリーキットは後述のローギアの使い勝手に影響を及ぼすものなので、交換の際は「30T(以下)で使用するのか、34Tにするのか」も合わせて考えておくとスムーズです。
ビッグプーリーキットを導入する前にやっておきたいことの一つとして「ディレイラーハンガーが曲がっている場合は交換」があります。
ロードバイクの場合、ヒルクライム等で標高の高い景色のよい場所や海沿いのビュースポット等で休憩することも多いですが、その際に強風であおられて倒れてしまう(先述のフレーム傷はこれが原因)こともあり、その際に変速機側に倒れるとフレームと変速機をつなぐ「ディレイラーハンガー」が曲がっていくことがあります。
上の図はディレイラーハンガーが曲がっているかどうかを確認する工具。ゲージがリムのブレーキ面に当たっていますが、
こちらでは離れてしまっています。本来真っ直ぐであればゲージの位置は変わらないはずですが、曲がっているとゲージの位置が変わってしまいます。
ビッグプーリーキット導入時のデメリットとしてよく挙げられるのが「変速性能が低下する」とありますが、セッティングがややシビアになってくるので本来の快適な変速性能を維持するためにも、ディレイラーハンガーが変形している場合は交換するのがベターです。
ちなみにディレイラーハンガーは「フレームの一部」のため、取扱いはそのブランドを扱っているところに限ります。今回はオーナー様の方でご用意してもらいました。
リアディレイラーのケージの長さが変わり、スプロケットの大きさも変わった結果、今回はチェーンも交換になりました。上が今回交換したチェーンで下が元のチェーンですが、結果として少し長くなりました。
フロント側のインナーギア(32T)とリア側のトップギア(11T)の組合わせ。リアディレイラーにテンションがかかるかどうかぐらいの状態ですが、
フロント側のアウターギア(50T)とリア側のローギア(34T)の組合わせでは、チェーンの長さがこれ以上短いとリアディレイラーに負担がかかってしまいます。
ビッグプーリーキットに交換する主なメリットとしては
・プーリーを通るチェーンの曲線が緩くなるので、チェーンの摩擦抵抗が少なくなります
・プーリーを交換することでゲージの長さがロングケージとショートケージ(シマノで言えば「GS」と「SS」)の中間ぐらいの長さになるので、アウター×ローが使いやすくなる
逆にデメリットとしては先述の「変速性能が落ちる」が挙げられますが、今回はダメージを負っていたディレイラーハンガーとリアディレイラーの交換もあり、不調だった変速性能自体は改善しました。
オーナー様のメインのサイクリングルートでは上りが多いので今回のビックプーリー化とヒルクライム仕様のスプロケットで少しでもラクになればと思います。
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5. 2回目のオーバーホール及びクランク交換(2023年9月)
前回のオーバーホールより2年近く経過し「イメチェン」も兼ねて、2回目のオーバーホールのオーダーを承りお仕上げさせていただきました。
こちらが作業前の状態。最初にご相談されたときは年間2,000km乗られているとの事でしたが、最近では走られる距離も増えてきて前回のビッグプーリー化のタイミングで交換したチェーンが伸びてきていたので、半年近くで2,000km近く乗られるようになりました。
チェーンなどの消耗に加えブレーキ操作が重たかったり海沿いの道を走ることで付着する飛砂など、少しずつ疲労が蓄積されているような状態でしたので、リフレッシュさせるような作業内容で承りました。
よって、今回のメニューも
1. ブレーキパッドの交換
2. ブレーキワイヤーの交換
3. シフトワイヤーの交換
4. バーテープの交換
5. チェーンの交換
6. ヘッドセットのクリーニング
7. スプロケットのクリーニング
と、いわゆる「セミオーバーホール」という作業に加え、グレードアップとして「アルテグラグレードのクランク交換」を施工させていただきました。今回はクランク交換、ケーブル交換、スプロケットのクリーニング、バーテープ交換の作業内容の一部をご紹介させていただきます。
今回交換させていただいたのは「FC-R8000」11Speed用のクランクです。2023年9月現在、シマノより「点検のご案内」がアナウンスされていましたので、念のためクランクアーム裏にあるアルファベットの打刻を確認したところ該当品でなかったので一安心。
今回のクランク交換では以前より使用されていた「楕円形状のチェーンリング」を移し替えます。
チェーンリングの着脱にはトルクスレンチのT25を使用します。スギノエンジニアリングのヒルクライムに特化した「CYCLOID」シリーズの11Speed対応モデルで重量は実測で26gと超軽量。
新しいクランクセットにチェーンリングを付け替えて再度取付け。楕円形状のチェーンリングは大きなトルクのかかる上死点・下死点の差を少なくすることでペダリング効率の改善が期待できる便利なモノですが、弱点としてはフロントのシフト操作時にチェーンが外れやすかったり、アウターギアへ入りにくくなったりするので対策も重要になってきます。現在では「BBB チェーンウォッチ」を装着し、チェーン落下のリスク対策を施しています。
以前にシマノPROのエアロハンドル「VIBE AERO ALLOY PURSUIT」に交換しましたが、より軽い操作感を実現するために今回は日泉ケーブルをご提案し「お任せします。」とご了承を得られたのでブレーキ・シフト共に日泉ケーブルで交換しました。
交換作業をしている際にも感じたのですが、日泉のアウターケーブルは「しなやか」なのでハンドルの中を通す作業も比較的スムーズに出来ました。
このアウターケーブルが「固い」とケーブルの出入り口のところで引っかかってしまい、被覆部分が傷だらけになってしまうので「しなやか」というのは重要で、作業完了後にオーナー様からも操作感の向上を評価していただけました。
ヘッドセットはシールドベアリングで傷みにくい構造になっているものの、飛砂は容赦なくヘッドセットの中に浸入してきます。グリスと飛砂が混ざり黒く変色していたので拭き取ります。放っておくとベアリングやワン(受け皿の部分)を痛め、ハンドル操作に静かに影響がでてきます。
スプロケットは今回も取外してクリーニング。使用したのはチェーンクリーナーとマルチフォーミングクリーナー、いつもの組合せ。チェーンクリーナーで汚れを浮かせて、マルチフォーミングクリーナーで汚れを流し、エアダスターで細かい砂汚れを落として、マイクロファイバー製のウェスで拭き取りました。
以前に交換させていただいたリアディレイラー、ブレーキキャリパーもアルテグラになり、少しずつ性能がアップしています。
そして「イメチェン」としてゴールドを投入。今回のバーテープはSUPACAZ(スパカズ)で後にボトルケージも同ブランドのモノに交換しました。個人的にはゴールドは統一する難易度が高いと思います。その理由は同じ「ゴールド」でもややオレンジ寄りだったりすることもあるので質感を揃えるのが大変ですが、うまくハマったときのカッコよさもピカイチなので、この「スパカズのゴールド」にあったパーツを探していきたいと思います。
オーナー様、いつもありがとうございます。
「自転車旅を、より身近に。」になるよう引続きサポートさせていただきます。
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